1-3 基本は「観察」  
 よい架鉄は現実的な架鉄。そう思っていた時期が俺にもありました。いかに本物らしく見せるか。これは架鉄の一要素として大事なものではありますが、すべてではありません。 
 個人的には現実の枠を離れた架鉄は大好きです。しかし、オリジナルの世界というのは読者になかなか伝えにくく、説明不足や表現力不足によって、せっかくのオリジナルワールドの魅力を伝え切れていない架鉄が多いのは事実ですし、残念なことです。 

 オリジナルの世界を作るとき、現実の世界は何かと参考になります。現実世界を観察することは、空想世界の架鉄に深みを持たせます。いや、むしろオリジナルの世界を作る人こそ、現実世界を観察してほしいと思います。  
 オリジナルの、独自のルールを持った世界を作るには、現実とどのように異なるのかを読者に提示する必要があります。特に断りがない限り、閲覧者は現実世界の法則や決まりごとをもとにあなたの架鉄を見ることでしょう。ですから、製作側としてはオリジナル世界と現実世界の「差分」を、閲覧者に提示する必要があります。 

 たとえば、起動加速力3.3キロ/秒、最高速度160キロの電車を設定しました。このくらいのスペックなら技術的な障壁はありませんが、経済的にはペイしません。ここで何の説明もないと、車両に詳しい閲覧者は「なんかウソくせー」と思ってしまいます。  

 そこで、上記のスペックを成立しうる理由を考えます。 

 まず、現実を観察します。なぜ現実の電車はほとんど110キロ?120キロを最高速度に置くのか。調べていくと駅間走行距離やダイヤ、電気代や車両価格などの制約が観察することで見えてきます。  
 「できない理由」が見つかったらそれを元に「どうすればできるか」を考えます。160キロに達する前に次の駅についてしまうというのが理由であれば、駅間距離が長い路線を設定するのもいいですし、技術をデフォルメして短い距離で160キロを出せる理論を考えてもいいでしょう。オリジナルの世界ですから「自分の世界ではこれこれこういう技術によって高加速を実現している」で十分です。技術的にそれが正当かどうかは、あなたの架鉄が技術面を表現するものでない限り、あまり考える必要はありません。 
 また、経済的な理由であれば、ある事業の試験要素としてメーカーと共同開発をしたとか、低コストで高速運転が可能なシステムを考えて、閲覧者に説明することで解決できます。これらは立派な思考実験であり、内容次第では閲覧者に地よいセンス・オブ・ワンダーを与えられます。 

 なお、オリジナルワールドをあえて説明せず、断片をたくさん表現して全体像は読者の想像力に任せるというテクニックもありますが、これは上級者向けのテクニックで初心者には向きません(もちろんこれに挑むというのはすばらしいことです。ぜひ挑戦してください)。 

 架鉄はフィクションです。フィクションであるからこそ納得のいく説明が必要です。そしてそれは現実を観察し、研究し、そしてあなたの世界を読者に理解してもらうための根拠を作るというわけです。  
 「荒唐無稽」な架鉄は悪くありません。悪いのは「説明不足」な架鉄です。
 

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